認知行動療法とは?推奨される理由や効果、正しい実践方法について紹介

認知行動療法は、精神療法の1つ。英語で「Cognitive Behavior Therapy」と言い、頭文字を取った「CBT」とも呼ばれます。

 今回は認知行動療法が推奨される理由や効果、種類、実践方法について紹介します。 特に、実践方法の箇所は必見です。

 これから認知行動療法を取り入れる方、認知行動療法の基本的な知識や実践方法について理解を深めたい方はぜひ参考にしてくださいね。

 

認知行動療法とは

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認知行動療法とは、起こった出来事に対しての取り方や考え方である「認知」に働きかけて心のストレスを軽くし、気持ちを楽に保つ治療法です。認知で瞬時に頭に浮かぶ考えやイメージを「自動思考」といいます。ストレスを感じにくくするには、この自動思考のクセや歪みを改善しなければなりません。

 

 自動思考のくせや歪みを正すと、物事に対する受け止め方や自動思考後の行動の改善に効果的です。高い効果を実感できることから、イギリスでは国家でも導入されています。認知行動療法は、精神的な病気の治療法として、高い注目度を集めています。


思考のバランスを良くする

認知行動療法により自動思考を正し、現実に沿った柔軟な考え方になるため、思考のバランスを整える効果が期待できます。

 

 以下のようなシーンで、物事をネガティブに処理したことはありませんか?

  • 余裕がないとき
  • つらいと感じているとき
  • ストレスを多く感じるとき

 

このようなシーンでは、思考のバランスを整えなければなりません。

一旦立ち止まり、自動思考を客観的に判断できると、客観的な判断で、より一層ポジティブに物事を処理できるようになるでしょう。

 

考え方と行動の両方を正していく

思考の歪みを正す以外に、自動思考後の行動パターンを把握して、思考と行動の両方を改善していく必要があります。

 認知行動療法では「行動療法」という治療法で、自動思考後の行動パターンを変えることが可能です。

 

認知のクセの改善は、物事が起こった際の自分の「行動パターン」が理解できれば、改善しやすいです。先に行動を変えれば、思考も後から変化します。

行動パターンを変化させ、思考パターンも改善することで、いち早く思考の歪みが改善できます。

認知行動療法が推奨される理由

認知行動療法は、欧米では特に精神療法として効果があるとされ、以下の症状の改善に適しています。

 幅広い症状に効果のある認知行動療法が推奨される理由として、回復率の高さと再発率の低さが挙げられます。それでは、推奨される2つの理由についてみていきます。

回復率が高い

医療先進国のイギリスでおこなわれた実験では「パニック障害」や「強迫性障害」に対する治療の約7割が薬物療法に比べて効果が早く表れました。※

 

精神疾患の改善方法には、大きく3つのやり方があります。

イギリスの実験では心理療法が最も効果があるとされ、治療法として「認知行動療法」を用いる機会が多いです。※

 

また、症状を治す方法でも向き不向きがあります。場合によって、治療法をいくつか組み合わせることがおすすめです。

 

※参考:イギリスの認知行動療法セラピストを7年で10,000人養成する計画

https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900052109/85-2-93.pdf

再発率が低い

実験では、認知行動療法によって症状を和らげた方は再発しにくいという結果が出ています。

再発率が高い症状も多い精神疾患で、再発率の抑えて治療をおこなえるということは、効果が高い治療法ともいえますよね。

 

その他にも、薬物療法と比べても、治療後の持続力が高いと認められ「予防」や「再発防止」としても効能的。

 認知行動療法単独で用いる以外に、薬物療法と合わせて併用されることも多いです。

 

代表的な思考の歪みの例

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認知行動療法で治療をおこなう「思考の歪み」の中でも、代表的な6つを紹介します。

  • 白黒思考(オール・オア・ナッシング)
    白か黒で物事をはっきり分ける考え方。
    例:「完璧にできなかったから、私はダメな人間だ」「敵か味方」 
  • 悲観的(マイナス思考)
    未来のことを全て悲観的に捉える考え方。
    例:「私にはできない」「どうせうまくいかない」 
  • 他人の考えを邪推する
    「相手はこう考えているはずだ」と相手の考えを悪い方に推測し、決めつける考え方。
    例:「あの人はやる気がない」「相手は私を嫌っているはずだ」
  • ラベリング、レッテル貼り
    自分自身や周囲の人にネガティブな感情を持つこと。過剰な一般化をしすぎた状態
    例:「あの人はダメな人間だ」「相手を泣かせたから、冷徹な人に違いない」
  • 「~すべき」化
    「~すべき」と決めつけて、自分自身を責めてしまう。理想と違うと落ち込み不満を言う。「新人は仕事は休まず働くべき」
  • 拡大解釈、拡小解釈
    失敗ばかりに目を向ける、大げさに物事を受け取る。
    例:「自分は上手くいかないことばかりだ」

認知行動療法の種類

認知行動療法は、認知療法、行動療法、その他の療法に分けられます。いくつかの種類を併用し、治療を進めても効果が期待できますよ。

 治療法について正しく理解し、自分自身に合ったやり方をおこなっていただきたいです。ここでは、認知行動療法の3つの方法について解説します。

行動療法

 行動療法では、改善をおこないやすい行動を意識することで認知の歪みを改善するよう働きかけます。代表的なエクスポージャー法と、リラクゼーション法にの2つについて解説します。

  • エクスポージャー法(暴露療法)
    学習理論の「慣れ」を活用した治療法で、苦手や不安に感じるものをレベルの低いものから1つずつ経験していきます。何度も治療としての経験を積み重ねることで、成功体験を増やし、徐々に慣れさせる治療法です。 
  • ラクゼーション法
    ラクゼーション法とは体を行動によってリラックスした状態にさせ、不安を取り除く方法。「漸進的筋弛緩法」や「自律神経法」も緊張や興奮を沈めておこなうリラクゼーション法で、認知療法と合わせて治療に使うことが多いです。

認知療法

認知療法は、考え方や物事に対しての感じ取り方を正しくしていきます。知名度の高い「スキーマ療法」と「エリスの論理療法」について解説します。

  • スキーマ療法
    スキーマ療法は、現実と認知との間に生じた考え方の違いである「隙間」である認知の歪みを埋めていきます。うつ病のカウンセリングに用いられることが多く、1人でも実践できる治療法です。
  • エリスの論理療法(論理情動行動療法)
    「~でなければならない」と考える思考に焦点を当て、改善をおこなっていきます。「すべて完璧に仕事をこなさなければならない」という思考から「うまく仕事がはかどらない日もある」「今日はこれくらいにしておこう」といった現状に満足できる考え方ができるように、働きかけをおこないます。

その他の療法

その他の認知行動療法のACTとマインドフルネスについて紹介します。

  • ACT(Acceptance and commitment therapy)
    「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」や「アクト」とも呼ばれ自分自身に対して「あるがままでいい」と感じ、認めていく認知行動療法です。思考や行動を客観的に分析した際に、認知の歪みをコントロールせずに、行動に焦点を当てる治療法になります。
  • マインドフルネス療法
    古くからの「瞑想」とも言われます。五感や思考、行動、感情を「今あるものをありのままに受容する」ことで今ある物に気づき、気持ちを満たしていく効果があります。心と体のストレス耐性を上げ治療効果を向上させるとして、認知療法と行動療法に加えて用いることが多いです。

認知行動療法を実践する際の流れ

認知行動療法は種類も多く、個人やグループや大人数、さまざまな形でおこなうことが可能です。ここでは、定型型の医師やカウンセラーとおこなう際の認知行動療法の流れを紹介します。

  1. あなたがストレスを感じるものを思い浮かべ、問題を整理していく
  2. 自動思考があなたの考えや行動にどのよう働きかけているか考える
  3. 生活を振り返りどのようにするとストレスが減るかを考える
  4. 自動思考と現実のズレを把握し、現実に沿って自由な視点で見方を変えてみる
  5. 新しい視点を見つけた際にあなたにとって何が一番大切かを考える
  6. バランス良く考えれるようになったら問題の解決方法や人間関係の改善方法を練習し今できることに取り組んでいく

大きく1から6の流れで進めます。現在起きている物事に対しての自動思考を分析し、客観的な視点を増やしていきましょう。

認知行動療法は1人でもできる?

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認知行動療法は、カウンセリングや集団以外にも個人でも用いることが可能です。個人で実践しても十分な効果があるため、自分自身の考え方を周囲やカウンセラーに知られたくない場合も、問題なく実践できますよ。

 

認知行動療法を取り入れた医療機関は少なく、正しいやり方を身につけて自身でおこなうことがおすすめです。紙に書いて思考を整理したり、WEBサービスを使用したりして認知行動療法を進めてみてくださいね。

紙に書いておこなう

紙に書いて自動思考の分析をおこなう際は紙に感情と行動を書き、自動思考のパターンを把握し、行動や感情を変えていく働きかけをします。

 紙に書く際は、簡単な箇条書きで問題ありません。現実で起きたこと、感じたことをセットで細かく書いていきましょう。

 

  • 客観的に率直な意見を書き出していくこと
  • 周囲との違いを感じたと思う点は、詳しく書き出す
  • 書き出した認知と現実を照らし合わせ、比較をおこなう

 

3点を意識し、メモのように紙に書いていきます。出来事と感情のセットを比較し、自分自身の歪みのクセを把握することが目的です。

 思考の歪みのクセが理解できたら、感情に伴う行動を見ていきます。改善をおこないやすい「行動パターン」へ意識を置くと、思考の歪みも少しずつ改善できます。思考と行動の両方を改善していくよう心がけましょう。

WEBサービスの使用

認知行動療法を取り入れたWEBサービスの活用で、セルフで紙に書いていく場合より専門的に認知行動療法をおこなえます。

  • 自分の状態や感情、行動パターンを細かく記録していくアプリ
  • セルフカウンセリングができるワークシート付きのアプリ
  • 認知行動療法をベースにした同じ症状を持つ人同士繋がれれるコミュニティアプリ

この他にも、認知行動療法をベースとしたさまざまなアプリがあります。現実で起こった出来事、自分自身の感情、行動パターンを分かりやすくアプリに記録し、視覚化ができれば、考え方のパターンを理解しやすいです。

認知行動療法で思考の歪みを正し柔軟な考え方を育てよう

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認知行動療法で自動思考のクセを改善します。普段ストレスを感じやすい方や、物事に対して無意識に決め付けて判断してしまう方も、物事を柔軟に処理できるようになりますよ。

 

ポジティブに物事を受け止められるようになり、気持ちを楽に保ち、自分らしく生きるきっかけとしても効果的です。

 

認知行動療法うつ病や不安障害の治療法以外にも、ダイエットや仕事など柔軟な思考を持ちたい場合にも効果的です。ぜひ普段の生活の中に、認知行動療法を取り入れてみてくださいね。